Story of TAKI BE CAN

造船や建設で培った鉄の加工技術と
完成まで、作り続ける力。

ここは、瀬戸内海に面した香川県丸亀市。讃岐平野にぽつんとそびえるお山がひとつ「讃岐富士」と親しまれる飯野山(いいのやま)の麓に、私たちの鉄工所がある。波の穏やかな瀬戸内海では古くから造船業が盛んに行われ、現在も国内有数の造船所が点在する。丸亀市もそんな街のひとつ。船に関わるエンジニアや職人たちが多く暮らしている。私たちの始まりも「造船」の仕事だ。

貨物コンテナを積載するコンテナ船、
鉄鉱石を積むバラ積み船や
全長300mにもなる巨大タンカー。
船は、そのほとんどが鉄でできている。

造船の現場では製造効率を上げるために、ブロック建造法という手法がとられている。
船を複数のブロックに分けて、小さなブロックごとに組み立てが行われ、最後に「総組み立て」と呼ばれる統合をして一艘の船が完成する。私たちは、船の外側を構築する外業(がいぎょう)、船内の溶接、エンジン主機・補機の土台づくり、配管や荷役装置の設置をする艤装工事(ぎそうこうじ)、配電周りを仕立てる機電装(きでんそう)など、幅広い分野の仕事を請け負っている。鉄に関する知識と加工技術を培い、職人が育つと共に、鉄工所を増やした。現在は鉄骨構造を中心とする建設業、プラント製造にも携わっている。

ものづくりを生業とする私たちは、
日々、黙々と手を動かしている。
ある時、鉄工所の日常が、
新たな熱を帯びていった。

Challenge 私たちの挑戦

「焚き火道具あったら、あったかくてええな。
作れるんちゃうん?」

信頼する社員たちと仕事を続けていくためには、大手企業から請ける仕事だけでなく自分たちが主体となる仕事を増やさなければならないと、代表の森山は考えていた。
同じ頃、夫婦二人でキャンプを始める。周りのキャンパーたちが、焚き火を楽しんでいた。
「焚き火道具あったら、あったかくてええな。作れるんちゃうん?」そんなひと言から、焚き火道具への探求が始まった。次第に、思い出す。子供の頃、庭先で焚き火の番をして、ずっと火を眺めていたこと。火は、不規則で、不定形で、目が離せない。この魅力はなんだろう。キャンプに行く回数が増え、目的は自作したロケットストーブに薪をくべることになっていった。燃焼にも何かしら規則性があるはずだ。より美しい焚き火を実現する道具づくりに、完全にハマった。脳裏には、造船業や建設業から一歩新しいフィールドに飛び出して、一般顧客に向けた製品を作りたいという想いもあった。自分たちにあるのは、鉄の加工技術。その技術を生かした、独自性のある製品を作る。燃ゆる火の温度を感じながら、新事業の構想が膨らんでいく。

鋳物の薪ストーブのように美しい火を、
アウトドアで鑑賞することができたら?

筒型のロケットストーブは燃焼効率が良いが、せっかくの火を眺めることはできない、そこで、前面にガラス扉を取り付けた小型薪ストーブを試作する。やっと納得のいく形ができた。TAKI BE CAN(タキビーキャン)の原型だ。この試作機はキャンプ場で注目を集めた。試作をはじめて、2年が経っていた。美しく燃焼する焚き火を、より多くの人が気軽に楽しむ。それは、どんなに素晴らしい時間だろう。自分たちにとって、そして社会に向けても、より良い一歩になると確信した。こうして2018年に、THE IRON FIELD GEAR(ジ アイアン フィールド ギア)が誕生する。焚き火を起点にして、新しいアウトドアギアを創造する。自然を楽しむこと、そして新しい「鉄」の在り方を提案していく。私たちの挑戦が始まった。

Engineering 試行錯誤の始まり

果てがない鉄の変化と対峙する。

鉄は必ず熱膨張を起こして歪む。
それを、いかにコントロールできるか。

「鉄」と言っても、膨大な種類がある。炭素量やその他合金の含有量によって、硬度も靭性も大きく異なる。加工技術も鉄の種類や最終形態、製造環境に応じて使い分けがされる。つまり鉄加工においては、まず製品の基本要件を確定する必要がある。ものづくりの現場では、全て一から見極めなければならない。TAKI BE CANの製品化までには、解決すべき課題が幾つもあった。その一つは、鉄の熱膨張だ。燃焼室で焚き火を燃やすと庫内の温度は400℃にもなる。高温により鉄は熱膨張を起こして歪む(ひずむ)が、冷めた時に元の形に戻るようコントロールしなければならない。試作機では溶接を使って成形したが溶接は熱膨張に弱かった。デザイン性を損なわず、一人で持ち運べる重量を超えないように設計を見直し、細かなパーツを増やして、補強を重ねていった。

ホーロー加工による耐熱性と美しさ。
その実現にも困難を極めた。

塗装にも、思わぬ誤算と発見があった。耐熱塗装は色の数が限られる。さらに何度も熱されることで塗装は劣化し、錆を防ぐことができなくなる。熱に強く鉄との相性が良いのはガラス釉を塗布して焼付けるホーロー加工だ。そこで専門工場に頼み込んで、塗装のテストをしてもらうことになった。製品を見せるなり、職人さんに言われた。「あんまり、ようないよ。」何が良くないと言われているのか、分からなかった。残念なことに仕上がりも安定せず、ガラス被膜にヒビが入ってしまう。ホーロー加工ができれば、錆や耐食を防ぎ、自由なカラーリングとガラス被膜の美観が得られる。諦めたくない。製鉄メーカーに問い合わせ、ホーロー加工に適した特殊な鋼鉄があることがわかった。初めて知る素材に驚きながらもう一度、新しい鋼鉄で製品を組み立てた。今度はホーロー加工が美しく仕上がった。

思うようにいかない。
手を動かし、考えてを繰り返す。
ものづくりの醍醐味とも言えるけど、
そうやってしか、進んでいけない。

TAKI BE CAN / TAKI BE COOKERについて

TAKI BE CAN / TAKI BE COOKERについて

ギアの構造

フロントドアは、大きな耐熱ガラス。本体の燃焼室は、内箱と外箱からなる二重構造になっている。空気の取込み口は、火力調整窓と背面の通気口。また、空気の排出口として、高い煙突が突き出す。煙突も二重構造だ。形のベースは、燃焼室と煙突からなるロケットストーブ。燃焼室と外気の温度差によって上昇気流を生み、高い火力を維持することができる。

とにかく、簡単な操作

一連の流れの中で、人が操作することといえば、最初に火をつけること、薪をくべること、火力調整窓の開け閉めだけ。大事なポイントは、よく乾燥した薪を使うこと、最初にしっかり熾火をつくること、皮のグローブを装着して火傷に注意すること。ほら簡単!誰でも美しい焚き火を楽しむことができる仕組みなのだ!WOW!

1一次燃焼

燃焼室に薪を置き、火をつけると庫内が温まる。同時に煙突から外にひっぱる空気の流れが起こり、燃焼が始まる。熱された薪が100℃を超えると薪の中の水分が抜け、炭化が進む。250℃を超えると可燃性の木質ガスが発生し、このガスに火がつく。この燃焼を一次燃焼と呼ぶ。燃焼が長く継続することは、実は非常に難しい。まず、常に新しい空気を取り入れる必要がある。これは火力調整窓と背面の通気口から供給される。次に、庫内を高温のまま維持しなくてはならない。一般的な鋳物の薪ストーブでは、鋳物という重厚な鉄の塊がこの役割を担う。持ち運ぶことを目的としたTAKI BE CANは、二重構造によって「空気の壁」を作り保温をする。燃焼室だけでなく、煙突まで二重構造にして最大限に温度を保つ構造だ。

2二次燃焼

庫内の温度が高い状態に維持されると、さらに燃焼が進み、煙の質が変わる。一次燃焼では、可燃性のガスや煤が燃焼しきらずに残る。この可燃性物質が新しい酸素に触れることで二次燃焼を起こし、排出される煙の一酸化炭素濃度が下がる。クリーンバーンとも呼ばれている。きちんと二次燃焼している時は、煙の色はほぼ無色。匂いも少ない。一つの薪から余すところなくエネルギーを得るので、非常に燃焼効率が高いのだ。

3白金触媒でさらにクリーンな煙に

家の庭で焚き火調理を楽しむことができるTAKI BE COOKERは、さらに一歩、煙をきれいにする「白金触媒」という仕組みを取り入れた。白金触媒はグリット状のパーツにプラチナが塗布されており、熱を受けると低温燃焼を起こして、一酸化炭素を二酸化炭素と水に分解するというもの。これにより、二次燃焼した煙をさらにクリーンにして排出することができる。身近なところでは、自動車の排出ガスの浄化などにも応用されている化学反応だ。